当院の取り組み

【内科】気管支喘息とは?

2023/12/12

1.気管支喘息とは

気管支喘息(以下、喘息)とは、日本アレルギー学会より「気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄による喘鳴、呼吸困難、胸苦しさや咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患」と定義されています。気道内のアレルギー性炎症を背景とした呼吸器疾患で、長引く(3週間以上が目安)の咳、喘鳴、息切れ、胸苦しさなどの症状が出現し、夜間から明け方にかけて悪化するという特徴を持っています。やや古い統計になりますが、2003年に実施した厚生労働省保健福祉動向調査では、喘息は小児で11~14%、成人(15歳以上)で6~10%の有症率とされており、比較的多い呼吸器疾患であると言えます。喘息は、アレルギー性疾患として分類されていますが、全ての患者さんにアレルギー性の素因が強いわけではありません。例えば、アレルギー性炎症が強い「アトピー型喘息」と、そこまで強くない「非アトピー型喘息」が挙げられます。また、運動により誘発されるタイプ(運動誘発喘息)、喫煙に伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併した喘息(Asthma and COPD Overlap, ACO)など、さまざまな喘息のタイプが存在することがわかっています。つまり、喘息患者さんといっても、一括りにはできず、各々なタイプに準じた対処を行う必要があります。

2.喘息の診断

喘息の診断は、日本アレルギー学会や日本喘息学会が発行している喘息のガイドラインの診断アルゴリズムを参考にして行います。喘息として典型的ではない症状や経過の患者さんの診断は、症状の経過や診察所見だけでは難しいこともあります。問診や診察に加えて、血液検査(末梢血好酸球数・血清総IgE値)、呼吸検査(スパイロメトリー、吸入改善試験、広域周波オキシレーション法、呼気中一酸化窒素濃度[FeNO]測定)、胸部画像検査などを組み合わせて、総合的に判断していくことになります。当院でも、上記の検査を実施することが可能です。喘息は、様々なタイプが存在し、症状の出現しかたもそれぞれであり、他の疾患との鑑別が難しいこともあります。そのため、喘息と診断したのちに、実は喘息ではなかったということもあります。そのため、喘息の治療が始まり症状が改善しても、引き続き別の疾患の可能性はないか、定期的な診察や喘息の各種検査のフォローアップが必要になります。

3.喘息の治療

日常生活において喘息症状が全く出現しないことを目標としています。そして、喘息治療の大黒柱となる薬剤は吸入ステロイド薬になります。定期的に吸入することで、気管支の炎症を制御することを目指します。それでも効果不十分な場合や、より強力な治療を要する場合には、気管支拡張薬、抗アレルギー薬(ロイコトリエン拮抗薬など)、テオフィリン徐放製剤などの併用を検討します。喘息の重症度やタイプに応じて、薬剤の選択を行なっていくことになります。治療中も定期的に症状の経過を問診表(喘息コントロールテスト[Asthma Control Test, ACT])などで確認しております。また、十分な効果が得られなかった際、吸入手技に誤りがあったり、吸入を定期的に行っていなかったりすることがしばしばあります。正しい手技で定期的に吸入することが、喘息の安定化に繋がっていきます。そして、症状が改善したからといって、すぐに治療薬を自己判断で中止しないことも大切です。症状が落ち着いており、治療薬の減量や中止をご希望の際には、まずは担当医にご相談ください。

4.新たな治療

生物学的製剤という注射製剤があります。アレルギー性炎症が生じる機序を抑制することで、喘息の改善を目的としています。アレルギー性炎症が大きく関与しているアトピー型喘息で、かつ重症の患者さんに、主に適応があります。喘息の発作(最近では、急性増悪と呼びます)の際は、ステロイド薬の全身投与(内服薬・静注薬)を必要とすることも多いのですが、そのようなステロイド薬全身投与には骨粗鬆症・高血圧などのリスクがあります。生物学的製剤はステロイド薬のそのような合併症を軽減できるメリットがあります。現在、本邦では5剤の生物学的製剤が承認されておりますが、薬剤の特長がそれぞれあり、患者さんのタイプや併存疾患に応じて、薬剤を選択していきます。